研究協力者を募集しています!


現在首都大学東京大学院 人文科学研究科 橋本研究室では吃音のある方を対象とした行動研究を行なっております。

今回新たな実験を行うにあたり、研究にご協力いただける吃音のある方を募集いたしますので、ご興味のある方は是非お問い合わせください。なお、本研究の実施は首都大学東京南大沢キャンパス研究安全倫理委員会にて承認を得ております。

 

研究代表者:矢田康人(首都大学東京大学院人文科学研究科 言語科学教室 博士後期課程 言語聴覚士)

研究倫理責任者:橋本龍一郎 (首都大学東京大学院人文科学研究科 言語科学教室 准教授)

 

-募集要項-

1. 対象者

下記条件を全て満たす方を対象としております.

・吃音のある20歳から39歳までの男女で、精神疾患等の既往歴のない方

・感覚過敏を有しない方

・聴力に明らかな問題を有しない方

「繰り返し・引き伸ばし・ブロック」のいずれかの吃音症状自覚的にある方.

・募集期間内に2日間実験に参加できる方(原則として実験1, 2の両方にご参加頂きます)

    ※2日間連続でなくて構いません.

 

2. 募集期間

2020年1月23日〜2020年5月31日

 

3. 実験実施場所

首都大学東京南大沢キャンパス

※京王線南大沢駅より徒歩5分

※新宿駅〜南大沢駅 約35分

 

4. 実験所要時間

1回2時間、2日間合計4時間

2日間の間隔は1-2ヶ月以内が望ましい

 

5. 謝礼

1回3000円

2回合計6000円(交通費込)

 

6.実験受付日時(実験開始時間)

火曜日:10:00-19:30

水曜日:10:00-19:30

木曜日:10:00-19:30

第1第3土曜日:11:00-19:30

第1第3日曜日:11:00-19:30

 

7. お申し込み方法

 

下記の必要事項をご記入の上、お問い合わせ先までメールにてご連絡ください。

お問い合わせ先:tmu.stuttering●gmail.com

※●→@

 

必要事項

【お名前】

【年齢】

【性別】

【主な吃音症状】

繰り返し(こ、こ、こんにちは)

引き伸ばし(こーんにちは)

ブロック(、、、k こんにちは)

※当てはまるもののみ

【ご希望日時(第4希望までご記入ください)】

第1希望:

第2希望:

第3希望:

第4希望: 

- 研究概要 -

吃音の詳細なメカニズムは明らかとなっていませんが、その症状の生起には脳の構造・機能的な問題が大きく関与していることが様々な研究により明らかとなっています。

特に多くの研究で一貫して明らかとなっていることとして①大脳左半球の活動不全 ②大脳右半球の過活動 ③大脳左半球に局在する言語野の接続不良 の3つがあります (1)。

 

これらの知見から考えられることとしては、発話に関する感覚情報(聴覚・触覚)と運動情報(口腔運動)との統合が上手くいっていない、あるいは各々に問題がある、という可能性が挙げられます。

しかし、具体的にどのような問題がありそれが吃音を引き起こしているのか、またどう治療につなげることができるのか、という点については未だに多くの議論がなされています。

 

そんな中私達は①遅延聴覚フィードバック(DAF) と②経頭蓋直流電気刺激法(tDCS) の2つに焦点を当て、上記の解明に取り組んでいます。

今回はこの2つの手技を用いた2つの実験にご協力いただける方を募集しています。

 

【実験1:DAF感受性の個人差についての検討】

○背景

DAFは自身の発話音声を僅かに遅らせてフィードバックするもので、非吃音者がこの条件下で話すと発話が非流暢になるのに対し、吃音者では発話が流暢になる場合があることが明らかとなっています。しかし、全ての吃音者において発話が流暢になるわけではないこと、効果のある遅延時間に個人差があることなど、そしてそもそもなぜDAFにより吃音者の発話が流暢になるのかなど、明らかにされていない点が多くあります。

 

私たちのグループは以前、吃音者15名を対象とした遅延時間200ミリ秒のDAF条件下での音読課題実験で、DAFは吃音が重度であるほど有効であり、逆に軽度の場合は発話がより非流暢となる傾向があることを報告しました(2)(図1)。

しかし、実際には重症度だけでなく、様々な要因が影響することが予想されます。

 

そこで本研究では様々なフィードバック条件を設定し、DAFによる効果の個人差の要因を明らかにすることを目的とした、新たな実験を行うこととしました。

 

○課題概要

・吃音検査

・個人に関する質問紙(吃音について, 発達について, 聞こえについて など)

・聞こえに関する課題(6種)

・加工された自身の声を聞きながらの文の音読課題

 

 

【実験2:発話非流暢性の脳内メカニズムの検討】

○背景

吃音者において発話時に見られる脳活動の特異性として、大脳左半球の活動不全と右半球の過活動が数多くの研究で報告されてきました。しかし、fMRIなどによる従来の脳機能イメージング法では、脳の特定領域の活動と行動との因果関係を実証することはできません。そこで近年はTMSやtDCSといった非侵襲的な脳刺激法が用いられるようになってきました。tDCSは頭皮上に設置した電極から微弱な電気刺激を行うことにより、電極直下にある脳の活動を一時的に促進したり抑制したりすることが可能とされる脳刺激法で、吃音に関する研究にも徐々に取り入れられるようになってきました(図2)。

 

世界で初めてtDCSが吃音の改善に効果があるという報告がイギリスのChesterらのグループにより行われました(3)。彼女らのグループは左半球の脳活動を促進しながら言語課題を行うことにより吃音頻度が低下し、その効果が6週間に渡り持続した、という研究結果を報告しました。

しかし同年10月、私たちのグループは、吃音者15名を対象に、大脳左右半球に対してそれぞれ活動の促進・抑制の刺激を行い、それによる吃音頻度の変化をみるという研究を行い、左半球ではなく右半球の活動を抑制することで吃音頻度が統計的に有意に減少した、という結果を報告しました(4)(図3, 4)

 

この2つの研究結果の相違を踏まえ、本研究ではtDCSを用いて吃音生起の詳細なメカニズムを明らかとすることを目的に、より大規模な実験を行うこととしました。

 

○課題概要

・吃音検査

・個人に関する質問紙(吃音について, 発達について, 聞こえについて など)

・聞こえに関する課題(6種)

・脳刺激を行いながらの文の音読課題

 

★ tDCSは運動機能に関する研究や失語症治療を目的とした臨床研究など、近年様々な研究に利用されており、その安全性が

  確認されています. 我々のグループが過去に行なった研究においても、有害事象は生じておりませんのでご安心ください.

★ 本研究は吃音の発生メカニズムの解明を目的とした研究であり、治療研究ではありません. したがって、本研究に参加する

  ことで吃音が軽減・治癒するわけではありませんのでご注意下さい.

 

引用 

(1) Etchell et al., “A Systematic Literature Review of Neuroimaging Research on Developmental Stuttering between 1995 

      and 2016.”

(2) Yada, Y. Hashimoto, R., Tomisato, S., & Iimura, D. (2018). Induction of speech fluency by using transcranial direct     

    current electrical stimulation and delayed auditory feedback. The 2018 Inaugural Joint World Congress of Stuttering  

    and Cluttering, Hiroshima

(3) Chesters J, Möttönen R, Watkins KE. Transcranial direct current stimulation over left inferior frontal

      cortex improves speech fluency in adults who stutter. Brain 2018

(4) Yada,Y., Tomisato,S., Hashimoto, R., (2018). Online cathodal transcranial direct current stimulation to the right       

      homologue of Broca’s area improves speech fluency in people who stutter., Psychiatry and Clinical Neurosciences. 

図1)DAFによる吃音頻度の変化量と吃音の重症度との関係を示したグラフです. 両者の間には統計的に有意な正の相関が

          あり、吃音が重度であるほどDAF により発話が流暢となる傾向が示されました.

図2)経頭蓋直流電気刺激法に用いる装置です. 頭皮上に設置した赤・青2つの電極から微弱な電流を流し、電極下にある

    大脳皮質の活動を一時的に変調します.

図3)両側下前頭皮質と両側上側頭皮質に対して陽性刺激を行い賦活を促進した場合の吃音頻度と、擬似刺激(Sham)を行なっ

    た場合の吃音頻度との比較です. いずれの条件においても統計的に有意な変化はみられませんでした.

図4)図3と同様の脳領域に対して陰性刺激を行い賦活を抑制清田場合の吃音頻度と、擬似刺激を行なった場合の吃音頻度との

          比較です.  右半球下前頭皮質の賦活を抑制した際に吃音頻度の有意な減少を認めました.